ナラ枯れ&竹の開花でどうなる?香川の森(1月28日(日)香川の森林を知ろう)
1月28日(日)に開催された「香川の森林を知ろう」についてレポートします。本日は、香川大学農学部准教授の小林剛先生をお招きして、香川の森林で起きている「ナラ枯れ」や「竹林の開花」について、座学とフィールドワークによる講座を行いました。
■四国は雨が多い地域と少ない地域が隣接する世界でも珍しい地域
小林先生のお話は、香川県の森林の特徴からスタートしました。香川県は、日照量が多い割には雨が少ないため、植物が発達しにくい特徴があります。逆に高知県は日本有数の雨量が多い県。どうやら、四国は雨が多い地域と少ない地域が隣接する世界でも珍しい地域のようです。私たちが近所のスーパーで、1年を通して海の幸、山の幸、そして野菜や果物を食べられるのは、このような地域特性のおかげなのかもしれません。
香川大学農学部准教授 小林剛先生(専門:植物生態学)
■ナラ枯れでドングリの木が枯れ、竹林とイノシシが拡大している?
「日本全国では2010年から流行しているナラ枯れ※。四国では、2019年から見つかっています」森林は、炭素を貯蔵する重要な役割があるにもかかわらず、香川県の森林では、ナラ枯れが発生しているようです。杉や檜よりドングリの木(広葉樹)が多い香川県の森。香川県のドングリの木はこれからどうなってしまうのでしょうか・・・。
※ナラ枯れとは:ナラ類の木に(ナラ菌を持った)カシノナガキクイムシが侵入し、ナラ菌の感染により導管(水を送る管)が目詰まりを起こし、水を吸い上げる機能が失われ枯れます。カシノナガキクイムシは樹幹内で産卵を行い、翌年、羽化した新成虫がナラ菌を持って飛び立っていきます。
「四国では、ここ数十年竹林が拡大しており、あわせてイノシシの目撃エリアも拡大してきました」竹の密度が高くなると、植物や昆虫の多様性が下がってしまう可能性もある竹林。現在、120年ぶりの破竹(ハチク)の開花がおきていて、開花した数年後には枯れてしまうそうです。四国内のドングリの木ではナラ枯れ、竹林では開花・・・色々なことが起きているようです。
■ナラ枯れしたドングリの木には何がいる?
じっとしていると足元がジンジン凍えてくる天気ですが、後半は、ドングリランドのフィールドに出発。ナラ枯れしているドングリの木を見に行きました。1か所目は中谷林道から。急斜面に、マーキングされた木が沢山ある状況を見学しました。つづいて2か所目はコブシ坂を上がって森の中へ。ナラ枯れの木を間近で見ることにしました。
・周辺に落ちた沢山の枯れた枝
・木に空いた1~2ミリの沢山の穴
・根本のフラス(木屑)
・落ちていない枯葉
ナラ枯れの木は、色々な特徴があるようです。「カシナガ見つけた~!!」木の根元にいた子供たちは、カシノナガキクイムシを見つけたようです。
■最後に
ビジターセンターに戻った後は、参加者と小林先生の質疑応答コーナー。竹林で暮らす虫のこと、ナラ枯れの発生状況、ナラ枯れを運ぶ虫のこと・・・沢山の質問がありました。小林先生は、質問への回答だけでなく、森の生態に関する色々なお話もしてくださいました。
・竹はオスメスがなく、同じ親同士で受粉できること
・竹をほどほどに間伐すると、植物の植生が豊かになる
・ナラ枯れは夏に見つかる(水の吸い上げが出来なくなり、水が必要な夏場に一気に枯れる)
・遠くから「枯葉がついている木」があればナラ枯れの可能性(本来、枯葉はすぐに地面に落ちる)
・ナラ枯れによる倒木は、森の更新が進む要因にもなる(一方で倒れないナラ枯れも見つかっている)
今回のような講座は、大人の皆さまが参加することが多いのですが、今回は小学生3名と中学生4名が参加してくださいました(職員一同、感謝感激です)。今日の参加者から、未来の植物生態学者がうまれるかもしれませんね。NPO法人どんぐりネットワークは、ドングリランドという森林公園を拠点に「木や竹の循環利用を体験できる場作り」を目指しています。木や竹・自然の恵みを楽しく利用するイベント、動植物の生態を観察するイベント、維持管理に必要な技術や知識を身につけるイベントなどなど、年間通して実施していきます。皆様のご来園+イベント参加、お待ちしています!!
以上