香川県の森林特性と竹林整備を考える(1月8日(日)「竹林整備体験講座」)


1月8日(日)に開催された、「竹林整備体験講座」についてレポートします。お正月も終わった冬晴れの日に集まったのは17名の皆様。本日は、香川大学小林先生をお招きして、「座学」「フィールドワーク」「実践」の3段階で、竹林整備に関する講座が開催されました。



・講師:香川大学農学部准教授 小林剛氏
・主催:香川県
・日時:2023年1月8日(日)9:30~15:00
・場所:ドングリランド
・参加者:17名

●座学

小林先生より、3つの切り口でお話がありました。



【森林生態系の機能と香川県の里山】
 皆さん、香川県の地理的な特徴といえば、何が思い浮かびますか?「面積が小さい」「雨が少ない」「温暖」「ポッコリお山」「里山が多い」などがあげられるのではないでしょうか。小林先生からは、「炭素吸収量が少ない」「日照時間が長いのに雨が少ない」「真砂土(有機物が少ない)が多い」「実は、災害が起こりやすい箇所が多い※」といった説明があり、香川県は「森林が発達しにくい」特徴があることが分かりました。里山1つ1つは小さいかもしれませんが、里山を維持していくことで、森林を発達させていきたいですね。
※県土面積に占める災害危険個所の割合という観点では、香川県は「土石流危険流域箇所」や「地すべり危険個所」が多いです(47都道府県でトップ10に入ります)。(国土交通省のデータ調べ)
【竹林拡大の生態系影響と森林の簡素貯蔵能力に配慮したモウソウチク林の密度管理】
 小林先生より、モウソウチクに関する生態調査の説明があり、森林内に竹林(モウソウチク)が増えると、「常緑樹の成長がマイナスになる」「土壌が水を含む力が弱くなる」「微生物の栄養素が減る」といった説明がありました。また、竹は「中が空洞」なこともあり、広葉樹と比較して「炭素を貯蔵する量が少ない」特徴もあります。皆さんが竹林に関わる目的は、「畑への浸食を食い止める」「広葉樹が負けないようにする」など様々かと思いますが、それに応じて適切に管理していきたいですね。
 竹(地下茎)の生命力が強いことは、皆さんご存じかと思います。小林先生より、竹林を管理するためには、「春の新芽(タケノコ)を刈る」「竹林に隣接する大型広葉樹を保護する」「竹林内の広葉樹の若木を保護する」などを、小規模で続けていくことが必要、とお話がありました(大規模な活動は、継続が困難なこともあります)。この1年、ドングリランドで実施してきた「竹林整備講座」をはじめ、「タケノコ狩り」「竹林伐採」「竹細工(万華鏡、ランタン、箸、モビールなど)」のイベントを継続することは、意義がありそうですね!!
【ハチクの開花による大規模枯死と開花地の管理へ向けた展望】
 「竹が数十年~百年の周期で一斉に花を咲かせて枯れる」という話は、ご存じの方もいるのではないでしょうか。2014年に東かがわ市でハチクの開花が見つかって以来、現在も、県内のあちこちでハチクの開花が見つかっています。前回のハチクの開花が明治初期(1900年頃)だったため、現在は120年ぶりの「ハチクの開花周期」であり、10年近く開花が続いている状況です。
 小林先生の竹の生態に関するお話はさらに続きます。「竹は開花と同時に落葉する」「その後、残存した地下茎から笹状の葉が出る」「(地下茎が弱って)主幹が枯れるのは開花から3年目」などなど。参加者もうなずきながら聞いています。「枯れた竹林が他の植物に置き換わる」という話題については質疑応答の嵐。
〇竹林の開花は、竹林根絶のチャンス
〇一方で、1回「間引き」をしただけでは、明るくなって地下茎が元気になってしまうことも
〇数年かけて、間引きを繰り返すことが大事
などなど、小林先生と参加者の竹林談義は、終わることがありません。

●フィールドワーク



 お昼休憩のあとは、ドングリランドのフィールドに出て竹林を見学しました。「人が手入れしている竹林」「(研究目的で)放置している竹林」「(かつての竹林が置き換わった)雑木林」など、小林先生が生態研究している竹林を含め、様々なエリアを歩きました。「アラカシの巨木が元気なので、この辺りは、竹が少ない」「上空から光が入るので、常緑樹の若木が生えている」「この若木の周辺の竹を伐採し、大事に育てれば、あのアラカシのようになる」など、解説を聞きながら竹林内を歩くと、いつもと違う竹林に見えてきました。

●実践



 最後は、ヘルメットを装着し、ノコギリを使って竹の伐採を行いました。最初は、職員による解説を交えたデモンストレーションがありました。次は、グループに分かれて参加者が、実際に竹の伐採を行いました。普段から森林や竹林で伐採をされている方は手慣れたものですが、「慣れていない方」「初めての方」には、いい経験になったようです。

●最後に

 小林先生の講座は、「香川県の里山が荒れていること/竹林が拡大していること」の原因は、松枯れや外来種(例:ナラ枯れ)ではなく、不用意に都市開発を行い、適切な森林の維持を怠ってきた「人間」にあるのではないか?と私達に問題定義してくださいました。我々ひとりひとりが、里山の意義を理解し、手を入れること、計画的に維持管理してくこと、の必要性を忘れないことが必要なのかもしれません。
 NPO法人どんぐりネットワークは、ドングリランドという森林公園を拠点に、森林を体験できるイベント、維持管理に必要な技術や知識を身につける(体験する)イベントを年間通して実施していきます。皆様のご来園+イベント参加、お待ちしています!!

以上